子育て通信 #120

基本的生活習慣 3

トイレの時間

 早寝・早起きと食事のことを取り上げてきましたが、基本的生活習慣としてあとはどのようなことに気をつけると良いのでしょうか?
 清潔を心がけることは大事な事です。一人で手を洗い、一人で歯を磨く、少し大きくなれば一人でお風呂に入り、きれいに体を洗うことが出来るというようなことも大事な事です。当然、トイレは一人で行けて、自分できれいに拭くこともできるということです。
 最近は立派な紙おしめができたせいでしょうか、おしっこをしても気持ちが悪くないのか、おしめを替えて欲しいと訴える子どもが減っているようです。おしっこをしたという感覚さえわからないのかも知れないと言われています。
 トイレは大事な基本的生活習慣の一部でしょう。おしっこやうんちの感覚をしっかりと覚え、どのように対処するのか体得していく必要があるのです。

不調を訴える子ども

 また、現代の子どもは勉強することがかなり重要視されているとすれば、勉強する習慣というのも基本的生活習慣に入るのでしょうか? 情操教育はどうでしょうか? なかなか考えものです。勉強する習慣は大事なのですが、ただでさえ、このことが重要視されて、子どもが本来身につけるべき基本的生活習慣が欠けている可能性があります。

 最近の子どもたちには昔の子どもに見られなかった体の不調が増えています。頭痛や腹痛・胃痛、腰痛、だるい、便秘、鬱病等々です。そして、その原因の多くがストレスと言われています。ストレスによる過敏性腸症候群も増えています。では、どんなストレスがあるのかというと、友達との人間関係もありますが、遊びたくても勉強しなければいけない・塾に行かねばならないとか、テストの点数が気になるとか、勉強と関係するストレスが多いのです。勉強のために睡眠時間も減り、朝から眠くだるいということもあります。
 そして、体のリズムが崩れ、体の不調、意欲の低下、情緒不安定などが起こってくるわけです。

運動する

 「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」ということが基本的生活習慣の根本とも言われます。
 例えば、赤ちゃんの時によくハイハイする子は背筋力や腕の力がついていると言われます。そのため、あまり早くから立って歩かないでハイハイを長めにすることが望ましいという話を聞いたことがあります。そのことの全てが正しいと言えなくても、ハイハイをするのは確かに大事です。

 体を動かすということでは、最近は体育教室やスイミングスクール、サッカークラブ、空手、バレエ、スケート等々早くから習わせておられるところがあります。これだけ体を動かしていれば充分なのでしょうか? もちろん悪いわけではありません。
 でも、敢えて、この部分も考えてみたいと思います。食事の時、ただ栄養を採るための食事では完璧ではないということを書きました。食べる環境が大事だということでした。少々、食事の内容は悪くても、楽しく食べることができたり、親が一生懸命作った料理、つまり「愛」という隠し味があることによって、子どもはすくすく成長するのです。
 同じように運動が体にとって、保健・医学・体育的に良かったとしても、楽しい環境で運動しているのかは問われるのです。また、他の子どもたちとの関わりはどうなのかということも大事なことです。

遊ばせる

 都会の子どもはなかなか遊ぶ場所が無くてかわいそうと言われていましたが、田舎の子どもたちには自然豊かな遊び場があっても、外に出ないで家の中でゲームをしていることが増えていると聞きます。都会も田舎も大きな違いは無いのかも知れません。
 私が教師採用試験に落ちて、1年間産休講師・病欠講師をした時に、小学校に8日間だけ担任として行ったことがあります。この学校は東京の小学校に比べると運動場が広く恵まれていました。しかし、私が最初に驚いたのは休み時間にこの広い運動場に数えるほどしか子どもが出ていないということでした。
 別に禁じられているわけでは無かったので、私は自分の担任した6年生のクラスの子どもたちに呼びかけて、運動場に出て、ドッジボールでの「バラ当て」というのをしました。子どもたちは「ドッジボール」は知っていても、「バラ当て」は知らなかったようです。運動場を自由に逃げ回り、ただただボールで誰かを当てるだけの遊びです。ルールは顔に当てないことくらいです。
 こんな単純な遊びなので、やり始めた時はそんなに夢中になってくれませんでした。ところが、だんだん面白くなってきたみたいで、休み時間になると、「先生、バラ当てしよう」と子どもたちの方から誘ってくるようになりました。
 運動場は広々していましたが、ほとんど子どもたちは出ていませんでしたので、私のクラスの子どもたちは運動場いっぱい好き放題にバラ当てが出来ました。
 私自身楽しんで遊んでいましたが、校舎の方を見ると、窓からたくさんの子どもたちが私たちを見ているのが見えました。私が「一緒にやろうよ」と誘うと「いいの?」と。「もちろん」。するとどんどん子どもたちが出てきて、私がその小学校を辞める時は、休み時間に運動場は子どもたちでいっぱいになっていました。子どもたちは基本的に動き回りたいのです。

運動は脳に良い

 また、適度に運動した後は実際勉強に身が入ります。つまり成績も上がるということです。これは前にも書いたことですが、中学校の教師をしている時に実証済みです。
 陸上部の生徒を中心に、朝、授業前にジョギングしていました。過剰な運動では無いので、Ⅰ時間目から授業に身が入るようになって、生徒の成績も上がったのです。
 また早起きしていますので、体調も良く、風邪もひきにくくなり、健康的な生徒が増えました。
 この中学校でも、朝、授業前に運動場は生徒でいっぱいになりました。子どもたちは基本的に動きたいのです。

体が自由に動かせる大切さ

 さて、体を動かすのは基本的に子どもたちの好きなことですから、わりとほっといても遊んで体を動かします。ゲームやテレビ、ビデオにはまり込まない限り、体を動かします。幼い内の運動体験、体を動かす遊びは、平衡感覚を養ったり、危険回避、安全確認の力を身につけるために大切なものです。ですから、ゲームなどバーチャルな世界に早くから慣れてしまいますと、現実にどう動いてよいのかわからなかったり、全く動けなかったりしてしまうのです。

 私が陸上部の生徒達とその現場に出くわした一人の男の子は、30cmくらいの高さのところから道路に飛び降りたのですが、転んでしまいました。しかも、手が出ないのです。私たちはびっくりして駆け寄りましたが、頭を怪我しています。顔もすりむいています。すぐに中学校の保健室に連れて行き、親を呼びました。頭を打っていることや、目の心配もあって、病院に行くことになってしまいました。
 この話が30年程前のことです。私は養護の先生に「どうして、手が出なかったんでしょう?」とお聞きすると、「最近、そういう子が増えているのよ」と言われびっくりしたのです。
 幼い時から、転び慣れていない、というより、遊び慣れていないのです。だから30cm位のところから飛び降りただけで転ぶし、手も出ないらしいのです。
 体を動かしての遊びというのはとても大事なものです。体を自由に動かせるようになり、安全を確保できるようになるのは、こうした遊び、運動からです。

 そして、遊ぶことで人間関係、互いの距離の取り方、挨拶の仕方なども学び出すのです。動くこと、遊ぶこと、仲間と何かすること、こうした事で社会性も身につくわけです。

石投げ器で敵を倒す

 ダビデという人物は、少年の時羊飼いとして、一人で何頭もの羊を野原に連れ出して番をしていました。
 何もない安全な時、ダビデはたて琴を弾いて歌を歌ったりしていました。
 ところが、羊を狙う悪い動物が近づいてくると、ダビデは追い払うのです。そのために彼が用いたのは石投げ器でした。皮でできた石投げ器に滑らかな石をはさみ、革紐を振り回し、石を動物めがけて飛ばすと、石は見事急所に当たり、動物は倒れるのです。
 ダビデはイスラエルを脅かす敵を見た時、少年でありながら、敵の戦士と戦いました。その戦いは石投げ器を使っての勝利となったのです。
 普段、やっていたことが、この大事な時に国家的に役立ったのです。遊びのような石投げが。

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