子育て通信 #65

母の日に思う

    

お母さん笑って!

 かつて何かのアンケートで見たのですが、「子どもの好きな人」の一番が「お母さん」です。そして、お母さんに望むことで大変多かったのが「お母さんに笑って欲しい、ニコニコしていて欲しい」というものでした。

 子ども達にとってお母さんというイメージは「優しく」て「明るい」というのが多いようです。同時にお母さんがブスッとしていると子ども達も気になるのでしょうね。お母さんのにこにこ顔を見たいのです。



笑いは健康の素

 前にも書いたことですが、笑いは癌に対する免疫力を高めるとか、精神的に安定させる力を生み出します。子どもは生きていくためにたくさんの力を求めています。そこに笑いは大変大きな力になります。

 家庭に笑いがあればあるほど生きる力が増し加わると言ってもよいのではないでしょうか。「生きる力」とは2002年頃の教育改革でうたわれており、そのために総合的な学習も展開されていきました。人間として非常に基本的な力だということです。

 平井信義先生の本「今日からやさしいお母さん」にこう書いてありました。「子どもにとっては、何よりも大切なのは、家庭において『笑い』の多い生活を楽しむことです。それが子どもの情緒を安定させるからです。・・・私は、ユーモアやジョークによって、『笑い』の多い家庭の雰囲気を作ろう--と提案しています。それによって、子どもたちもまじめ人間から救われて、楽しい生活を味わうことができるからです。

 それにはお父さんに役割を担ってほしいのですが、武士社会以来男性には『笑い』を軽蔑する伝統が作られてしまったのです。この伝統を打ち破るのはなかなかたいへんです。 

 しかし、女性であるお母さんにはその伝統がないから、お父さんがどうであっても、子どもを国際人に育てるために、お母さんが笑いの多い雰囲気を家庭の中に作ってほしいのです。それには、子どものおどけ・ふざけをいっしょに楽しむことと、それをいけないこととして圧力を加えないことが大切だと思います。」(企画室「今日からやさしいお母さん--心にひびく子育ての言葉」p137-138)と。

 笑いを生み出す家庭は子どもの精神面に健康を与えるのです。



思い出の子

 中学の教師になり、担任した最初の1年生のクラスに、6年生の時にお母さんを亡くした女の子がいました。家庭訪問週間に彼女の父親とお会いし、お話を聞きましたら、「この子のために担任を女の先生にして欲しいと願っていたんです」と言われました。どうしてこの話が中学校に伝わっていなかったのかと思いましたが、もう遅すぎました。お父さんの願いを色々お聞きし、努力していくつもりでいた私ですが、こればかりは私も困りました。

 しかし、お父さんは「でも、先生。気にしないで下さい。あの子は明るい子で、今のクラスがとても気に入っているようです」と言ってくださって、私もホッとしました。

 お父さんの気持ちもよく分かります。思春期真っ盛りの女の子ですから、男親ではどうにもならない気持ち。私も副担任の女の先生に彼女のことを頼みました。

 彼女はほとんどお母さんのことを言いませんでした。思い出すと泣いてしまうからでしょうね。がんばっている姿がよく分かりました。彼女のために祈らずにはおれませんでした。

 おとなしい子ではありましたが、いつも笑顔の絶えないスポーツ好きの子でした。まず、涙を見せたことがありませんでしたが、参観日とかお母さん方が来られる時は辛かったようです。お父さんは頑張ってくださって、参観日にはできるだけ顔を見せて下さいました。

 そんな彼女は家でもよく家事をしたようです。お母さんに感謝の気持ちを持ち続けたのでしょうね。

 この子にとって幸いだったのはお父さんの努力もあり、家庭が明るかったことと、クラスも大変明るく楽しかったことです。彼女の心の辛さはこの明るさ、みんなの笑顔で癒されれていたのかも知れません。



母の日が生まれた

 1907年にアメリカで、母の日がA・ジャービスさんの提唱によって生まれたそうです。クリスチャンであったお母さんの生前の愛に感謝してその気持ちを表したいということから始まり、アメリカでこのための日を「母の日」と制定しました。

 世界の多くの人に生きる力を満たしてきたのは母親の笑顔ではないでしょうか。たとえ怒られることがあっても、にこっとしてくれるその笑顔を見ることで子ども達は生きる力に満たされてきたのではないでしょうか。「母の日」をつくりたくなるくらい、母親の影響力はあるものです。

 その母親の笑顔は天につながっていると思います。神様は私たち人間を愛しておられますが、子ども達は見えない神様の笑顔を母親の優しい笑顔から感じ取っていると思います。

 産休講師をした時に出会ったハンディキャップのある女の子(女の子と言っても中学3年生なんですが、障害をもって生まれ、体も大きくなりませんでした)の家を訪問するため一緒に帰ったことがあります。この家庭には子どもが9人いたと思います。「たくさんの子どもで大事にされているのかな?」と思っていったのですが、その思いは吹っ飛びました。もうすぐ家というところで、表に出ていらっしゃったお母さんが見えたのです。

 彼女は「おかあさーん」と叫んで走っていきました。お母さんもニコニコして「○○ちゃん!おかえり!」と抱き上げて、抱きしめられたのです。その瞬間、私のすべての心配は吹っ飛びました。同時に神様が私たちを喜んで迎えてくださることを目の当たりにした気持ちになりました。

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