子育て通信 #67

一緒に過ごせる間に

 ある講演会でお話ししたものを少しまとめて書いてみます。

子どもたちの求めているのは?

 子どもの成長は早いものです。皆さんは子育てをされているわけですが、子どもが何歳になるまで子育てをするつもりでいらっしゃいますか?  義務教育の終わりまでですか? 高校卒業まで? 大学卒業まで? 就職するまで? 結婚するまで? 自立するまで? 一生?



1.子育て--何を育てるの?

  ●赤ちゃんの時期

 赤ちゃんが生まれるまで、多くの場合は穏やかです。赤ちゃんの泣き声も聞こえませんし、おしめを替えることもありません。「元気に生まれてきてくれるだけでいいです。他には望みません」とゆったりした気持ちで言っていられる時期です。

 生まれてきたらしょっちゅう泣かれて、おっぱいだ、おしめだと大忙しで、夜中にも何度も起こされ睡眠不足になるお母さん・お父さんもたくさんおられます。また「元気に生まれてきてくれるだけでいいです。他には望みません」なんて言っていたのに子どもが大きくなっていくと、あれもこれもできなくてはいけないと、色々なことを教えようとし始めます。本当に大変ですよね。

  ●子育てって?

 いったい、子育てって何なのでしょうか?考えてみると、結婚も子育てもとても大事な事なのに、学校で勉強してこなかったように思います。高校でも大学でも授業に「子育て」は無かったのです。(最近は高校で赤ちゃんと触れ合う授業を取り入れているところもあります)

 多くの場合、親になって突然子育てを始めるのです。昔はおばあちゃんの知恵をいただいてやってきたことが多かったようですが、今ではたくさんの子育て本があります。テレビでもしています。いい時代になったように思いますが、情報が多すぎて、返って迷ってしまうのが本音のようです。

 赤ちゃんのうちは多くの時間を寝て過ごします。おっぱいを飲んで、寝て、泣いて、おしめを替えてもらってという程度の生活です。しかし、この中に大切な子育てがあるのです。ミルクを飲んで寝ていればよいのだからと、「テレビを見ながらミルクをあげて」では育たないものがあるのです。心です。赤ちゃんはミルクを飲みながらお母さんの顔を見て、その優しい笑顔を見て脳・心に蓄えていくのです。つまり、この時期の子育てとはお母さんの笑顔を見せることなのです。そして、笑顔と共に優しい語りかけが大切なのです。

 さらに、スキンシップです。おしめを替える時、赤ちゃんは気持ち悪くなったお尻周辺を気持ちよくしてくれるので喜びます。快感を覚えるのです。この時脳内物質が出て、赤ちゃんは快感を求める力をつけます。赤ちゃんにとって「気持ちいい」「ホッとする」という感覚が脳・心に蓄えられていくのです。

 赤ちゃん時代にはここのところが一番大事な子育てになるのです。つまり、お母さんの笑顔、語りかけ、スキンシップが大事な時期と言えます。自分で何もできない赤ちゃんですから、お母さんに完全に依存しています。依存しきっていないと生きていけないからです。その依存を通して「愛」を覚えていくのです。赤ちゃんは愛されないと生きていけないのです。



2.親にできることって?

 ●幼児期

 少し大きくなってきますと、動きが大きくなって目が話せなくなります。完全依存状態から少し自我が出てきて、親から離れてみようとします。さらにもうすこし大きくなりますと、好奇心が芽生えます。第一反抗期と呼ばれる難しい時期を迎えます。するともっと親を離れようとします。が、決して離れることはできないのです。

 この時期になってくると幼稚園を考えたりする時期ですね。親とのコミュニケーションだけでは足りないものを感じます。同年代、あるいは年齢の近い異年齢集団の必要を覚えるわけです。「社会性を身につけて欲しい」と思うからです。

 でも、まだまだ親の庇護の元にあるので、親としては目が離せない、手も離せないのです。親と一緒にいなくてはやはり生きていくのが難しい時期です。

 ●小学生期

 さらに大きくなって小学生になるとお母さん方の負担はかなり減ります。幼稚園への送り迎えが無くなったり、学校で過ごす時間も多くなり、実際に多くの時間を親と離れて過ごすようになるからです。しかも、自立に向かいますから、自分のことは自分でできるようになり、そういう点でも親の手がかからなくなるのです。すごく楽になる反面、だんだん離れていくことにさみしさを感じる方も多くおられます。

 とはいえ、まだまだ親との関係は深く、一緒に過ごす時間は多いものです。

 ●依存と自立

 赤ちゃんの時期は完全依存ですから、いわゆる「過保護」という問題はありません。しかし、幼児期の自分でできるし、自分でしたいという時期に親の「過保護」「過干渉」があると、子どもの自主性を奪い、自立する力を弱めてしまうので問題です。

 つまり、だんだん親離れ・子離れをしていかねばならないのです。が、上手く離れる離れ方のマニュアルがあるわけではありません。子どもによって、家庭によって違いがあるものです。「十分依存した子どもは、上手く親離れできる」とも言います。「十分な依存」つまり子どもの側からの「甘え」がある時に十分その甘えを受け入れる親はよい子育てをしているというわけです。子どもが甘えてくるのを受け入れることが「甘やかし」になると思って、厳しく離していくと子どもの心が不安定になることが多いのです。基本的には子どもの甘えを全て受け止めて大丈夫なのですが、子どもの性格や色々な条件によってそれが「過保護」につながることも無いとは言えません。そういう全てに当てはまるようなマニュアルの無いところが、子育ての難しさであり、また楽しさなのです。

 ●思春期

 小学生高学年から中学生になりますとほとんどの子どもは思春期にあり、第二反抗期を迎える子達も出てきます。いわゆる体も大人に近づき、精神的にも自立しようとしている時期です。この時期は親から離れていく時期です。

 多くの場合、この思春期を過ぎて青年期と呼ばれる時期に入りますと、たとえ同じ家にいても精神的に自立し、親の言いなりにならないわけです。一緒に過ごすことも相当少なくなっているのです。話をしても必要最小限のことだけで会話が弾まないこともあります。反対にいつまでも親に色々話をしてくれる子どももいますし、一緒に出かける子どももいます。どの状態がよくて、どの状態が悪いとは言えないのです。が、青年期・成人期にありながら、自分のことを自分でできなくて、親に全部してもらうとか、親に頼りすぎる、親の言いなりになるというのは問題でしょう。こういう場合は無理に親離れをさせる必要があります。

 「いつまで一緒に過ごせるのか?」という点で考えれば、一生一緒に過ごす家庭もあるでしょう(物理的にはです)。しかし、田舎で高校すら近くにない場合は高校時点で下宿・寮生活をして親を離れることもあります。こういう事情は色々ですので、ここではあくまでも精神面で見ますと、思春期がそのポイントになると思うのです。思春期はまだ大人ではなく、急激に大人になろうとする力が体や頭・心から働き出すのです。今までに無い心身の変化を体験する子どもたちですから、この時期に不安を持つのはごく普通のことです。さらにその不安がひどくなって精神的な病気になることも近年では相当数あります。実際、昔だと子どもには鬱病は無いとさえ言われていたのですが、今では子どもの鬱病(小学生の鬱病)が普通に見られるようになってしまいました。

 こういう時代の中での子育てですから「子育てが難しい」と思われても仕方が無いと思います。私は幼児期を親子で上手く過ごした家庭は、子どももうまく親離れできるようになる思っています。そういう点では幼児期の過ごし方がとても大事だと思っています。

 思春期は子どもの心も不安定な時期ですから、親の対応がどうあるべきが問われます。少しずつ親離れに向かってきた子どもが思春期に不安を持ち、悩みながらも自分で自分の事を決めていけるならすばらしいのですが、不安や悩みの先取りをして親の方からどんどん答を出していくと、現代の子どもたちは結構受身ですから、それをどんどん受け止めてしまいます。つまり、自立できなくなるのです。

 つづく...「一緒に過ごせる間に2」

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