子育手
足が手の役割を!
だいぶ前に両手の無い女性が出産し、赤ちゃんのおしめを足で替えていらっしゃる映像を見ました。感動でした。
学生時代(養護学校教師を目指していました)、あちこちに実習・ボランティアに行っていましたが、その時にやはり手の無い女の子(中学生くらいの年齢だったと思います)が一所懸命、足で針に糸を通して服を縫っているところを見学したことを思い出しました。
その時は正直ショックでした。足の指があんなに器用に動くなんて思ってもみなかったからです。
クリスチャンになって間の無い私でも、神様のすごさを感じました。足は歩くためにあるものと思っていた私は、足が手のように働くのを見て、色々な可能性を与えてくださったことに感動したのです。
そのことで、私は障がいを持っている方でも私たちの思ってもみない仕事が出来るのではないかと思い、ますます障がい児教育(今なら支援教育)の可能性を感じました。
赤ちゃんを抱く
こんなに足が使えるとしたら、果たして私は手を手らしく使っているだろうかと思ったのです。
子どもが生まれて抱いた時、私の手と腕はこわごわ抱いた緊張感で硬かったのでは無いかと思います。その後だんだん上手になり、硬さは無くなっていったと思います。
マッサージ
東日本大震災で被災した方々のためにボランティアでマッサージをしに行った方達がいます。マッサージは大変喜ばれ、何度も何度もその方達はボランティアで出向かれたそうです。
被災した方々は心にも大きな傷を負ってしまわれ、その辛さは体も心もカチカチにしたようです。その時にマッサージをしていただくことで体がほぐれるだけでなく、心もほぐれてきたのだそうです。
マッサージ機ではなく、人の手でマッサージしてもらうことが不思議な癒しを与えたそうです。
ある方がこう言われました。「マッサージはとても気持ち良く、リラックスできます。そして、何よりもマッサージされている間、『大切にされている』と強く感じられたのです」と。「大切にされている」という言葉に納得しました。
スキンシップ
そういえば、私も「子育ての会」で約30年間お話をしてきた中の、大事なことの一つとして「スキンシップ」を語ってきました。
赤ちゃんの時のスキンシップは無くてはならないものです。そして、だんだん大きくなってもやはり親子のスキンシップは欠かせません。
私も子ども達が赤ちゃんの時、体をさすり、手や足を触って、その気持ちよさそうな顔を見ると、こちらもまた嬉しくなったものです。
わが家では子どもが小さい時に「足の指クリクリ」というのをしていました。足の指をマッサージするのですが、これをしてやると子ども達は大喜びで、寝付けなかった子どももこれをしてやるとすぐに寝付きました。少し子どもが大きくなると今度は子どもが私の足の指をクリクリしてくれました。実に気持ちいいのです。
委ねることを知る
マッサージというのは自分は寝そべっていたり、特に何もしないで、ただ相手に身を委ねているだけです。
この相手に身を委ねているだけというのがマッサージを上手に受ける秘訣らしいです。こちらが何かしら努力して緊張してしまうと、ますます体がカチカチになってマッサージしてくださる方にも余分な力が入ります。
委ねると言うことで思い出したことがあります。
35年ほど前ですが、海で溺れた人を助けたことがあります。ポカッと水面に浮かんでいたので、数名で岸に引き揚げ、浜にいた人が人工呼吸をしてくださいました。
実はこの方は私たちと同じ団体だったのです。中高生サマーキャンプという教会の合同キャンプでした。引率で来られて、泳ぎに自信があったので少し沖へ出て行かれたら、思わぬ所で海水を飲み、慌ててしまい溺れて沈んでしまったそうです。そこで必死で海面に出ようとしてもがいたそうですが、逆に海底に沈んでいったのだそうです。
その時「あーもうダメだ。神様、あなたに委ねます」と言って全身の力を抜いたら、体が浮き上がっていったそうです。この方はそこで意識が消えたのですが、幸い病院で目を覚ました時には肺に水が入っていなかったため、その場で退院できました。
宿舎で祈って、その後夕食の時間になったのですが、何となく暗い雰囲気になっていました。そこにこの方が元気に戻ってこられたのです。一気にみんな元気になって、美味しい夕食会となりました。
夕食後、彼女からその体験をお聞きして、私は「委ねる」「力を抜く」ということの大切さを教えられました。
子育てでも力の入ったものでは何か上手くいかないのではないかと思うのです。
子どもが親に身を委ねて力を抜いているので、親もその子を触ってやる時優しくなれるのかも知れません。子どもを触ることで親の方が優しさを学んでいるのかも知れません。
スキンシップには色々なかたちがあると思います。ハグすること、抱きしめて背中をさすること、手を握ること、ほっぺたをなでること、頭をなでること、リンパマッサージすること、お腹が痛む子のお腹をなでてあげることなど色々あると思います。その時に「いい子、いい子」という気持ちでさするのと、テレビを観ながら、スマホをみながらさするのとではすごく大きな差があると思えます。
手当て
病気の時に手当てをすると言いますが、「手当て」、手を当てることで実際治っていくものがたくさんあります。
ある研究で、1秒に5cmほどの速度で皮膚をなでた時に最も副交感神経の機能が高まり、気持ち良く感じる事がわかったそうです。その時に最も反応する神経線維が発見され、「C触覚線維」と名付けられています。
逆に1秒に20cmの速度で触れると交感神経が優位になるそうです。
スキンシップを積極的に行うと「オキシトシン」という脳内物質が出やすくなることもわかっているそうです。オキシトシンは愛着関係を深めたり、ストレスを軽減したり、情緒を安定させる働きがあります。しかもスキンシップをしている時は親子両方にオキシトシンの分泌が促されるので、お互いの距離も縮まります。
スキンシップ不足の恐さ
幼少期のスキンシップが不足すると、オキシトシンが出にくい脳になり、情緒不安定になったり、感情のコントロールがうまくできず、切れやすくなったりします。スキンシップをたっぷりするとオキシトシンが出やすい脳になりますので、他人に対しても親近感が持てたり、信頼する力がついたり、人間関係を豊かにします。
オキシトシンはスキンシップをし始めて5分位すると出てくるらしいです。そこで10分くらいの触れ合いタイムが望ましいと言えます。
また、これは当然夫婦間でも言えることだそうです。
(参考:サインズ2017年10月号)
子育てに「手」はとても必要です。
今回のテーマを「子育手」にしたのもその理由からです。