麹町中学校から学ぶ
工藤メソッド
「麹町中学校の工藤メソッド」と言われる大きな学校改革をされた千代田区立麹町中学校の校長・工藤勇一先生のことを知りました。
早速2冊の本を買い求めてみましたが、その学校改革はわくわくするものでした。
〈学校の「当たり前」をやめた。〉という本の最初にはこのように書いてあります。
注目されている取り組みの中には、「服装頭髪指導を行わない」「宿題を出さない」「中間・期末テストの全廃」「固定担任制の廃止」などがありますが、初めて聞く方は、おそらくびっくりされると思います。
その他、現在進行中の麹町中学校の取り組みも、学校関係者の中には、「認めたくない」という方がいるかもしれません。
しかし、これらは、昨日や今日、思いついたことではありません。
山形で教員を始め、その後、東京都の教員となり、目黒区、東京都、新宿区の教育委員会で指導主事や管理職として経験してきた中で、ずっと考え続けてきたことです。「目的と手段を取り違えない」
『学校の「当たり前」をやめた。』
「上位目標を忘れない」
「自律のための教育を大切にする」
こうしたいくつかの基本的な考え方を大切にして、多くの学校で「当たり前」とされてきたことについて、見直しを続けてきました。
それはある意味、私にとっても、自分自身の教師としての習慣や考え方をそぎ取る作業でもありました。
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今、日本の学校は自立を育むことと、真逆のことをしてしまっているように感じます。
手取り足取り丁寧に教え、壁に当たればすぐに手を差しのべる。
けんかや対立が起きれば、担任が仲裁に入り、仲直りまで仲介する。
そうして手厚く育てられた子どもたちは、自ら考え、判断、決定、行動できず、「自律」できないまま、大人になっていきます。
そして、大人になってからも、何か壁にぶつかると「会社が悪い」「国が悪い」と誰かのせいにしてしまうのです。
生徒の笑顔がいっぱい
テレビでも取り上げていたので現場の中学校の様子を見ることができました。
中間・期末テストが無い代わりに「単元テスト」が度々行われ、しかも最初のテストが悪い点数であっても、再テスト(同じような問題が出される)を受けることができ、成績はこの再テストの点数でつけられるので、生徒達は点数を隠すことなく、「やったー」とか、「95点取れると思ったんですけどね」とか「やばいですね」なんてみんな笑って言っていました。
また、一クラス1名の担任という固定担任でなく、学年6名の先生全員が担任として働いておられました。そのためか生徒達も先生と仲良く、色々な場面で相談したり、話しかけたりしている様子が映し出されていました。
私の通った高校も
この本とテレビで、私は私の高校時代を思い出しました。私の入学した高校は大阪府立高校で、久しぶりに私たちの地区に新設された高校でした。突貫工事でも間に合わず、整地されていないグランド、体育館もプールも塀も無く、校舎二つと、プレハブのロッカールーム、プレハブの食堂(うどん・そばだけ)だけでスタートしました。入学式はテントでした。校歌も無いので、何を歌ったのか?
そのテントの中で初代校長は「この学校は受験体制をとりません。中間テストは無しで期末テストだけです。校則もありません。」と言われたのがとても印象的でした。もっと他にも言われたと思いますが、これしか覚えていません。
事実、中間テストは無く、期末テストだけでしたが、麹町中学のように「単元テスト」としての小テストは授業中に10分とか20分のテストとして度々行われました。そして、印象的なもう一つは先生方がとても明るく、話しやすい先生方ばかりだったということです。登校中に出会った先生と話をしながら学校まで行ったこともしょっちゅうでしたし、授業もおもしろく、笑いが絶えなかったのを覚えています。
体育館・プールは私たちが3年生の時にできました。ですからそれを使った思い出はほとんどないのですが、先生方は整地の遅れているグランドで楽しめるよう、毎月球技大会を開いてくださいました。バレーボールとサッカーでした。
サッカーでは先生方もチームを組み、ユニホームまで揃えて参加されました。下手くそな先生もかっこいいユニホームで笑いながら参加されていたので、本当に楽しかったです。新設校なので1年しかいない一年目は球技大会で先生チームと対戦するときは全生徒が両チームを応援していました。
高校でもありますから、かなり生徒の自由にさせていただきました。体育祭、文化祭も楽しかったですね。クラブは何もありませんから、自分たちでサークルからスタートしました。そして、次々サークルができ、「部」に昇格していきました。
私はサッカーサークルに入ったのですが、心臓検診でひっかかってしまい、運動制限をされてしまいました。体育の授業でも制限を受け、サークル活動も停止されてしまいました。
しかし、そんな友だちがもう一人いて、彼は陸上をしようとしていたけれど停止された友人です。私たち二人は「つまんないなあ」とぼやき、若さ故でしょうね「オレ、死んだっていいから走るわ」という友人に賛同してしまって、放課後、毎日、学校の外をジョギングすることにしました。田んぼの中にできた学校なので、ちょっと走ると良い景色が広がり、先月号に書いた「摂津峡」まで走りました。これがまた楽しかったです。その内、さらに仲間が増えまして、毎日、5-6人で走っていましたが、時には、バドミントン部や他の部の友人達とも一緒に走りました。
私もやったこと
私も教師になったとき、色々なことをやってみたいと思っていました。美術の教師でしたから試験は3年間に1回しかしませんでした。
麹町中学校では宿題が無いのですが、私は夏休みには宿題を出しました。もし宿題を出さなかったらどうだったのかなあと思います。
また、麹町中学校では工藤校長が生徒と一緒に給食を食べておられました。そこで色々な話を生徒とされていました。
私は中学・高校とも弁当で、先生が一緒に食べてくれた経験はありません。しかし、私が教師になったときはこれをしてみたくて、弁当を教室にもっていって、生徒と一緒に食べました。この時間はとても大事な時間でした。そのまま、昼休みの間グランドに出て生徒と一緒に遊びました。これは教師時代の楽しい思い出です。一緒に食べて一緒に遊ぶというのは大事なことだと思っています。
イエスの教育
イエス・キリストが弟子達になさった訓練が聖書に出てきますが、ほとんどイエス・キリストは弟子達と一緒におられます。そして、一緒に食事もし、一緒にあちこちの町や村へと出向かれます。そして、病人を癒したりなさるのですが、それを弟子達は直に見るのです。初めのうちは驚きだったでしょう。しかし、イエス・キリストから権威を託されて実地訓練にも出かけていきます。
また、イエス・キリストは子ども達を愛されて受け入れておられます。子ども達を祝福されています。
楽しんでみよう
今回、この麹町中学校の話から私は自分が体験した高校時代のこと、私の教師時代のこと、イエス・キリストのことを思い浮かべたのですが、共通しているのは「楽しい」ということ、「自分で考えて実行する」ということかなあと思いました。
自立・自律を目標としているはずなのですが、子どもを押さえつけていたり、大人の感覚、大人の目線でしか見ていないでその大事な芽を伸ばしてあげていないことが何と多いかと思いました。
実際、麹町中学校がやっていることを実行するのは簡単では無いと思います。先生方が一致しないとできないことです。そのために数年かけられたようです。校長の思いを受け止めて「一緒にやっていこう!」と決断された先生方も偉いなあと思ったのです。
イエス・キリストのなさったことを実行するのはやはり簡単ではありません。しかし、イエス・キリストは「できる」と言ってくださっています。皆さんの子育ての中にもイエス・キリストはそばにいて見守ってくださっているのです(工藤校長が一緒に給食を食べたように)。
子育てを楽しんでみてください。