発達障害の原因?!
どんどん変わる
発達障害のことが、大変多く取り上げられるようになり、本屋さんに行くとその関係の本が実にたくさんあります。
私が大学で障害児教育の勉強を始めた40年ほど前は「発達障害」という言葉も無く、「自閉症」という言葉が出てきた頃です。「自閉症って一体何だろう?」という疑問を学生達がもち、教授と話し合い、みんなで調べて発表しようということになったことがつい昨日のように思い出されます。
あの頃は、まだまだ障害児教育も陽の当たらない教育の部分でした。知的障害のことを「知恵遅れ」「精神薄弱」という言葉が良いのかどうか? など言葉の使い方でも悩んだ時代です。何しろ少し前まで重度の知的障害を「白痴」と呼んでいたのです。こうした言葉が差別用語になるということで「精神薄弱」と言われてきましたが、この言葉にも問題があるということで、1998年に「知的障害」と呼ばれるようになりました。
また、「障害者」という言葉も他の人に障害になる人に聞こえるということで、その呼び方が問題になりました。そこで、「害」の文字を変えて「障碍者」「障がい者」とするようにもなりました。まだまだこの分野は表記、呼び方でも変化がありそうです。
私が教師になる前は、「特殊学級」と呼ばれていたのが、「障害児学級」になり、すぐに「養護学級」になりました。最近は「(特別)支援学級」になっています。私も最近は何と言うのが正しいのか混乱します。
脳障害なのか?
こんな流れの中で脳科学が進み、知的障害に関しても色々わかってきたことがあります。知的障害とまではいかないけれども読み・書き・計算の部分で困難を感じる子どもがいるということで「学習障害」が発見されたり、その流れからだったでしょうか、「AD・HD」「アスペルガー症候群」が発見されました。こうした一連の障害を「発達障害」と呼ぶようになったのですが、それこそ、私たちが学生時代に「自閉症」を調べていた時は「脳障害」ではなく、親の育て方の問題から起こると言われていました。ところが、しばらくして、自閉症は「脳障害」と言われるようになり、親の育て方の問題では無いと言われるようになりました。
ところが、最近調べていると、また自閉症を「親の育て方に問題がある」というようなことを言っている学者があると聞きました。もちろんすべての「自閉症」がそうだとは言っていないと思うのですが、ビックリしました。
治せるのか?
そんな時に、「発達障害を治す」大森 隆史著 (幻冬舎新書) が出たのです。「治す」という題です。「障害というのは治らないものだ」と聞いてきた私にとっては衝撃的な題です。
早速買い求めて読んでみましたが、著者の大森先生はアメリカで実際にその治療現場に入り、学んでこられました。それを日本でも行い実績を上げておられるようです。その中心になるのは、鉛や水銀という重金属が私たちの体に蓄積し、それが脳に影響を与えているということです。その重金属を体外に排出することで「発達障害」が治るというわけです。
障害の分野に医学的な光がさしたことに大変嬉しく思いました。
発達障害が増えているという話がありますが、ある人たちは「増えているわけではなく、昔もいたけれど、問題になりにくい社会だったから、気にならなかったのだ」と言いますが、果たして真実はどうなのでしょうか? この本によれば、やはり増えているようです。
自然豊かだった時代には無かったことが、一見豊かになった社会ではどんどん問題を起こしています。豊かさを見直す時代に来ていることは、すでに言われてきたことですが、それを変えることができないのが現代社会の難しいところでしょう。
これからの課題
発達障害が増え続けることは単に個性としてその人を受け入れるには厳しい時代へと向かうことになると思います。そういう中で医学的に「治す」ことができるならありがたいことと思いますが、同時に前にこの「子育て通信」に何度か書いた「基本的生活習慣」を再度見直すべきではないかと思いました。
子どもたちが全体的にだんだん寝る時間が遅くなっていますが、みんなが遅くなっているから問題無いのでしょうか? いえ、みんなに問題が起こっていることになるのです。神様は人間は寝なければならない存在として造られました。赤ちゃん時代はほとんどの時間寝ています。成長ホルモンがしっかり出るためです。
大きくなっても、夜の10時~2時がゴールデンタイムと呼ばれ、この時間に熟睡することで人間は体を修復する力(ホルモン)を最大限出せるそうです。その時間を削る生活習慣は、たとえみんながしていても「常識」では無いのです。早寝、早起きは子どもにとって大事な生活習慣であり、脳の発達にもとても大事なのです。
コミュニケーション不足
私はこの発達障害に限らず、現代の子育ての問題や学校の問題に「コミュニケーション不足」があると思っています。AD・HDや広汎性発達障害が女の子の5~10倍男の子に多いといわれています。性差、男性と女性の脳の違い、いろいろな考えがありますが、お父さん(お父さんと言い切ってはいけないのかも知れません)が男の子に対するコミュニケーションが不十分になってこうした事が起こっている可能性は無いだろうか? と考えています。
私は思春期に関心があって調べていますが、突然思春期になって色々問題行動が起こるわけでは無く、幼いときから蓄積されたものが出てくるのです。その幼いときに男の子がお父さんと良い触れ合い、語り合い、冒険的体験などをしていればより良い思春期を迎えることができると思っています。反面、それが無かったり、少なかったりしたときに、思春期の子ども自身もわからない内側からの大きなエネルギーが吹き出して、問題行動になる事があると思われるのです。
また、学校でも教師と生徒のコミュニケーションは不足しています。現実に教師は忙しすぎて、生徒の悩みさえも聞ける時間が無いと言います。教師は自分の科目を教えるだけのロボットではありません。教師の人格が授業という形態を通して、生徒に伝わり、生きる力を身につけさせるのです。教師の笑顔や真剣さやその言葉・態度が、他の人を大切にするということを教えるのです。なのに、その教師が生徒と触れ合う時間が削られている現実は、子どもたちの発達に大きな問題だと思うのです。
もちろん子どもは子ども同士で育ち、発達します。しかし、それはあくまでも一面です。幼児教育の間は保育士との触れ合いを大事にというのは普通かも知れませんが、小学校でも中学校でも、高校でも、大学でも思春期を抜けきるまでは教師や大人とのコミュニケーションが必要だと思います。(もちろん、大人には大人のコミュニケーションがあるわけですが)
そして、私は神様とのコミュニケーション不足も感じています。特に日本人にとりましては「礼拝」という神様との大事な時間を持つ事をほとんど教えません。いつしか、五感と知識だけが大事にされ、もっと人間の深い人格的な部分(霊的な部分)のことが疎かにされていると思います。
見えなくても空気は実在するように、神は実在します。しかも、空気は人間に無くてはならないように、神様も無くてはならないお方です。この方とのコミュニケーションを子どもの時からしっかり持ち続けたいものです。
ご紹介
ある方からNHK教育の「エデュカチオ」という番組を教えていただきました。とても身近な話から、教育の本質に関するような話までわかりやすく語られています。きっと皆さんの参考になるかと思いましたので、ここにご紹介させていただきます。
毎週土曜 午後5時55分~6時25分
毎週土曜 午後0時~0時30分(再)教育を取り巻くニュースに社会的関心が高まるいま、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹さん、俳優で2児の父でもある東山紀之さんとともに、保護者の疑問や不安を解消していく番組です。(ホームページより)