一貫した親の愛
大変な時代
現代社会は大人にとっても生きていくのが大変ですが、それは同時に子どもたちにとっても大変な時代なのです。
ある子どもにとっては、親からの虐待という大きな問題もありますが、どの子どもにもほぼ共通してある問題は情報量の多さ、忙しさ、自然環境の無さ、なぜか早く思春期を迎えてしまうようになったことなど色々あるのではないでしょうか。
私たちの子ども時代とは明らかに違うのです。子どもが赤ちゃんの時は問題をほとんど感じなかったのに、子どもが成長するに従ってどんどん問題が増えてきます。このことが現代の子育ての難しいところです。
万引き
万引きが昨年の1.5倍になったという話をニュースで聞きました。大変なことです。その中に子どもたちもたくさんいるのです。しかも低年齢化していると言います。万引きというのは私が子どもの頃にはあまり聞きませんでした。仮にあったとしてもそれは貧しい家庭でお腹がすいてパンを盗んだりしたという話でした。
今(今と言ってももうだいぶ前からそうですが)の子どもたちの万引きは貧しいからというのはほとんどありません。いじめで「取って来い」と言われて、万引きしないと殴られるなどから万引きする子もありますが、もっと多くが特別な理由もないのに盗んでいるケースです。万引きは習慣化します。「盗癖」と言われたりします。
本当に早い段階で発見し、徹底して万引きが罪であること、犯罪であることを教え、子どもが反省すると習慣化することを防ぐことができます。早い段階とはそれこそ初犯のうちが一番です。それが複数回繰り返されるとどんどんやめられなくなります。
「子どもはしっかり反省したのに、またしても万引きをしてしまった」と、親御さんが泣かれるのを見たことが何度かあります。確かにその時の子どもの反省は正しいもので、心からそういう気持ちを持ったのでしょう。しかし、初犯でない限り、いくら子どもが泣いて反省したとしても、また何かの時に万引きをしてしまうことはあり得るのです。
ましてや万引きの原因が家庭内の諸問題や心の不安定などである場合、その原因が取り除かれていなければ当然再発はあります。
かつては万引きはあらゆる犯罪の入り口と言われていました。しかし、最近では万引きをしないで他の犯罪から悪の道に入り込んでいくケースが増えていると聞きました。子どもたちの犯罪のケースも様変わりしているのかも知れません。
酒・タバコ
酒・タバコの問題も相当大きな問題です。これらは大人にはさほど大きな問題ではなくても、子どもには確実に脳に大きな影響を与えます。
かつてはお酒などをお父さんが家で飲んでいても「大人になったら」ということで子どもたちも「飲んではいけない」と素直に理解していました。しかし、現代は大人と子どもの境界線が薄れてきたためでしょうか、親も平気で子どもに酒を飲ませてみたりして、早くからお酒を飲んでしまう子どもたちが多いようです。大変な問題です。
タバコはさすがに親が子どもに勧めることはないですが、子どもたちは何かしらそれが大人を象徴しているかのように感じ、好奇心もありますから吸ってみようとします。一度吸って「煙い!」「おえっ!」ときて二度と吸いたくないと思えば、それほどでもないのですが、子どもの好奇心はそんなに甘いものではありません。何度か挑戦します。もちろん悪いこととわかっていますから、親にも大人にもわからないところでやります。しかし、ある程度慣れてしまうと大人の前でも平気な子どももいます。私の身近に小学生が自転車に二人乗りしてタバコを吸いながら走り、警察官に補導されたケースもあります。堂々と吸っているのです。
タバコは「百害あって一利なし」と言われているように特に子どもには問題です。脳と肺を萎縮させ正常に機能しなくなります。それは大人の成長しきった脳や肺とは違いますから、大ダメージを受けます。絶対にタバコはいけません。
うつ病
私はかつて「子どもには鬱病は無い」と聞いていました。ところが、10数年前に出会った小学生がうつ病のようなのです。図書館で調べてみるとアメリカの翻訳本に「子どものうつ病」がありました。アメリカでは相当早くから子どもにもうつ病があるということで治療方法などを探っていました。しかし、日本ではなかなかそれがわからなかったのです。
最近は子どもにもうつ病があるということがかなり言われるようになりましたので、驚きながらも理解は深まっているかと思います。とは言え、子どもがうつ病になるほどの世の中、気になります。
一向に無くならない「いじめ」から不登校やうつ病になる子も多いようです。また、子どものうつ病は大人と現れ方が違うともいいます。そのため見落とされている子どもも多いと言われているのです。
薬物・性的非行
思春期になると薬物の問題や性的非行の問題も多々起こってきます。薬物は友達から麻薬と言われないでもらって、知らないうちに飲まされていたという子どももいます。麻薬や覚醒剤が子どもたちの身近な存在になってしまいました。しかも、それほど恐ろしいと感じていないことも事実のようです。
性的非行も低年齢化しています。思春期には体が変化し、性的なことにもかなりの興味を抱くものです。メディアやインターネットの普及は特にこの問題を引き起こしました。「援助交際」という言葉も古い言葉になってきました。
まだ精神的にしっかりしていないうちに性的体験を持つとセックス依存症などになりやすいという話を聞いたこともあります。特に両親の愛を十分に感じられなかった子どもは性的非行に走りやすということも聞いています。
うちの子に限って
問題ばかり書いてしまいましたから、気持ちが悪くなった方もおられるかも知れませんね。でも現実はもっと色々なことがあるのです。「うちの子は大丈夫!」とは誰が言えるのでしょうか?「うちの子に限って!」とはいつの時代にも言われる親の言葉だそうです。一見、子どもを信じている言葉ですが、子どもがわかっていない言葉です。
思春期が早く始まるから
19世紀には第二次性徴の最初の徴候があらわれるのが17歳だったのが12歳(あるいはそれ以下)になっているのです。しかもつい最近まで思春期は13歳頃始まり17歳頃に終わると言われていたのですが、最近では思春期がたっぷり15年も続くこともあるのです。(参照:「10代の子って、なんでこうなの!?」草思社)早く始まって、なかなか終わらなくなっているのは問題です。思春期自体が子どもにとって大変な時期なのです。それがかつては4~5年で終わっていたのに、今やその何倍もかかるようになっているわけです。
年齢相応のしつけ・教育
こういう子ども・思春期の問題を見ますと、子育ても変わらざるを得ないのかも知れません。
しかし、子育てや教育の根幹は「愛」です。子どもたちに教えるのも「愛」ですし、教える側も「愛」をもってかかわらなくてはなりません。年齢がいくら上がろうが「愛」は変わりません。ただ、子どもたちに対する対応の仕方が変わります。
赤ちゃんの時は、スキンシップが中心で「愛」をもってスキンシップする、微笑む、語りかけるということです。この赤ちゃんの時にした愛の表現は基本的にずっと続くのです。その上で、第一反抗期(第一自立期)を迎える時には、ほどほどの距離をとりながら、何もかも親がするのではなく、子どもにさせてみるのです。それがまた「愛」です。転んでも、「かわいそう!」と思って抱き起こすのではなく、自分で立ち上がるのを待ってあげるような「愛」です。
小学生くらいになると結構自分でしますから、親としても楽になってきて放っておくことが増えます。昔ならばそれで大きな問題も起こらなかったのでしょうが、現代はこの親の目が行き届かないところで問題行動を起こすようになってきています。小学生の犯罪をはじめとする問題行動です。この時期は手がかからなくなってきたのですが、まだまだスキンシップを中心にした関わりが必要なのです。
思春期にはスキンシップもできなくなるかも知れません。でも、子どもの記憶の片隅にあるそれら親の「愛情」は刻み込まれています。一人の人格として認めて話し合うような関係が必要になってきます。
一貫した親の愛が子どもを育てます。
「何よりもまず、互いに熱心に愛し合いなさい。愛は多くの罪をおおうからです。」
聖書Ⅰペテロ4:8