子育て通信

楽しいことの良さ

子育て通信

(藤井敬朗の人生を神様に感謝しながら書いています)

マシュマロテスト

  「マシュマロテスト」って聞いたことはありますか? (参考「ぼくたちは習慣で生きている」佐々木典士著 ちくま文庫)
  このテストは1960年代にスタンフォード大学のビング保育園で4~5才の子どもを対象に行われたテストです。園児が座るテーブルの上にマシュマロを一つ置きます。そして、次の二つの選択肢を与えるのです。

  • A.目の前のマシュマロ1個をすぐに食べる
  • B.マシュマロ1個を食べずに、先生が戻るまでの20分間、一人で待てればマシュマロが2個もらえる

  というもので、なかなか誘惑度の高いテストです。
  かじるまねをしたり、ずっとマシュマロを見ている子どもはたいてい待てずに食べてしまいました。3分の2の子どもは待てずに食べてしまい、その待てた平均時間は6分だったそうです。後の3分の1の子ども達は待つことができて2個のマシュマロを食べることができました。
  実はこのテストには後日談があります。この園児を追跡調査していたのです。待てた子どもは仲間や教師から好かれ、より高い給料の職業についたそうです。さらに中年になっても太りにくく、また薬物乱用の可能性も低かったそうです。

自己肯定力

  実は似たテストは他にも行われているようです。そしてこれは「意志力」が問われるわけですが、はたして意志力だけの問題かと研究した人もあります。すると「意志力」というより「自己肯定感」が左右しているのではないか? と考える人も出ました。自己肯定感が高いとセロトニンが多く出るそうです。そこでセロトニンを一時的に増減させる実験を行ったところ、セロトニンが少ない時は、目の前の報酬を取ろうとし、セロトニンが多いと将来の報酬を待とうとしたという結果が出たそうです。
  そこでテストを受けた時の感情で結果が変わることに目をつけた人もいて、「何か楽しいことを考えながら待つように」と指示された子どもは3倍近く待てるようになったそうです。反対に「悲しいことを考えながら待つように」と指示されると、子ども達は待てなくなったそうです。
  心理学者のティム・エドワード・ハートが、作業をする前に A.楽しい映画を見せる B.悲しい映画を見せる を行ったところ、AのグループはBのグループより20%以上も作業効率が上がったそうです。

お楽しみ会

  私はこういうことを知っていたわけではないのですが、自分の一つの信念として「学校は楽しくなくてはならない」「授業は楽しくなくてはならない」というものを持っていました。もちろんやみくもに楽しければよいなどとは思っていません。しかし、基本線としてそれを思っていました。

  そこで、私はできるだけ生徒を楽しませることを考えました。前に書いた林間学校の取り組みもその一つでした。
  その他、時々クラスの「お楽しみ会」をしました。「何でもいいから面白いことをしてみよう!」とだけ伝えると「よしもと新喜劇」を見慣れている関西人だけにいろんなことを考えてくれました。替え歌や劇、漫才なんの出し物をしてみんなを湧かせてくれました。そういう中で一つとても懐かしく思い出すのは、1年生担任の時の男子3人グループでした。ほうきなどにボール紙で作ったギターを貼り付けてエアギターをしたことでした。ラジカセ(当時はカセットテープだったので)でロック調の音楽を流し、それに合わせてギターを弾く格好をしたのですが、おとなしく真面目な男の子が派手にやってくれるので、普段とのギャップにみんな驚いて唖然とした直後に大笑いでした。
  この「お楽しみ会」では生徒達の別の面を見ることができました。それは担任の私にとっても嬉しいことで、生徒(子ども達)を一面的に見てはいけないと教えられたときでもありました。

楽しいことから真剣に!

  楽しいことをするとクラスはまとまっていくんです。もちろん楽しいことばかりがクラスではありません。問題も起こります。その問題に対してみんなで話し合い、時には涙もあります。しかし、楽しいクラスになっていると真剣に考える力もついているのです。またお互いのことを真剣に考えてくれるのです。これは教会でも言えることです。教会は色々大変なこともあります。しかし、基本的に愛し合っている教会ですから、楽しいこともたくさんあります。すると大変なこと、誰かの問題があってもそのために真剣になれるのです。そして真剣に祈ってくれるのです。

楽しい陸上部

  クラスも楽しかったですが、陸上部も楽しかったです。教師になって陸上部の顧問になりましたが、体育の教師でもなく、陸上の専門家でもない私は最初苦労しました。教えることはできないし、部員は少ない上にもともと陸上に関心があった生徒は少なく、まともに練習しないからです。
  私がグランドに出ないと練習しない状態ですから、とにかく、放課後はグランドに出て練習を見ました。ただ部員の少ない陸上部ですので、グランドを十分に使わせてもらえませんでした。
  そこで、私は部員を増やすことから手がけました。夏休みが明けると野球部やサッカー部など他の部でついていけなくなった生徒達が無所属になっています。そういう生徒を陸上部に誘うと30名ほどの部員になり、まずは校外を走ることから始めました。校外を走ると必ず学校まで戻らねばならないので、帰りはかなりのスピードで走ってくれます。ただし、私も一緒に走らねばなりませんから私もしんどいのは当然です。でも、こうして生徒と一緒に走ることでしんどさや楽しさがわかってきました。

楽しい練習を考える

  そこで、二年目からは生徒達にどのようにすると練習が楽しくできるか考えさせて、楽しい練習に取り組んでみました。彼等は色々考えてくれました。自転車屋さんで要らなくなったタイヤチューブをもらってきて、筋トレに使ったりもしました。
  スキップがなかなか足の筋力をつけるのに効果があるとわかると、スキップしながらグランドを何周も回りました。一つのスキップでは疲れてしまうので、スキップのバージョンを色々考えることでとても楽しく走ることができました。
 スタートダッシュの練習のために高跳びのマットを敷いて、そこに飛び込む練習もやりました。これが楽しくて、朝礼台から飛び込む遊びにもなってしまいました。
  また陸上の大会や駅伝のビデオを見ながら、ゴールの仕方やバトンパスの仕方、駅伝のタスキの形状までみんなで研究しました。そして、見つけたことをやってみるのですが、それは楽しかったです。

陸上部は楽しいといううわさ

  すると陸上部は楽しいというのが小学校にも伝わって、新入生が陸上部に多く入部してくれるようになりました。一気に80名、100名、私が教師を辞めるときには130名の部員になっていて、人数が増えると力もついていますし、グランドも使う時間を確保できるようになりました。
  この陸上部の楽しさの秘訣は上級生と下級生が仲が良かったことだと思います。上級生が先輩面しなくなったのは、生徒の中で教会に来てくれる生徒があったからです。最初の数名が「教会楽しいぞ!」と他の生徒に宣伝するものですから、日曜日には20-30名の陸上部員が教会に来ていました。そこで一緒に楽しく歌ったり、祈ったり、食べたりしましたし、試験前には上級生が下級生に勉強を教える場面もありました。おかげでみんな仲良くなっていき、これが楽しさの元となったとも言えます。
  楽しいから仲良くなったのだと思いますし、また、仲良くなったからさらに楽しくなったのでしょう。私の教師時代は本当に楽しく、恵まれていたと思います(もちろん大変なこともいっぱいあったんですよ)。

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Posted by shinnakano