良い言葉を!

子育て通信

子ども事情の変化

  ここ数年、本や新聞、雑誌に発達障害のことがかなり書かれるようになりました。それは以前の発達障害のとらえ方とは違った観点で書かれているものが増えたということです。
  ここのところ発達障害と診断される子どもが大変多くなりました。しかし、本当に発達障害を持つ子どもが増えたのでしょうか? それに疑問を持つ学者、医師が増えたから、以前とはまた違う観点での本が出るようになったと思います。
  実際、発達障害を持つ子どもは増えているのかも知れません。しかし、診断の仕方に問題は無いか? あるいはもっと別の問題があって発達障害と診断されてしまうのか? など、まだまだ未知の世界です。

色々な障害

  さらに、発達障害だけでなく、精神障害やその他の困難さを抱える子どもたちもいます。例えば「聞き取り困難症(聞こえているけれど聞き取れない)」や算数障害(ディスカリキュリア)と言われる学習障害(LD)の一種で、計算や推論が困難な症状を示すものがあります。対人コミュニケーションなどには問題がなく、国語や社会などの科目も周囲と変わらない習熟を見せているのに算数だけが極端に苦手な場合だそうです。それは数を感覚的にとらえる力が欠けていると考えられます。パッと見た時に何個あるかとかがとらえにくいそうです。

  また、「発達性協調運動障害(DCD)」という脳機能の発達に問題があるために、運動や動作にぎこちなさが生じたり、姿勢に乱れが生じ、日常生活に支障が出てしまう発達障害もあります。こういうことはその人(子ども)にとって生きにくいと感じられるものです。

うつ病の小学生

  30年以上前だったかと思いますが、まだ「子どもにうつ病は無い」と言われていた時代がありました。そんな時に小学5年生の男の子を持つお母さんが「この子がうつ病と診断されました」と言って相談に見えました。驚いた私は調べてみたのですが、子どもにもうつ病があるということが書いてある本が見つからないのです。ところが、少しして、アメリカの翻訳本で子どものうつ病のことが書いてあるのを見つけることができました。その後、どんどん「子どものうつ病」に関する本が日本でも出てきました。大きな変化に驚いた時でした。

統合失調症

  東京に来てからは統合失調症に悩まされている青年数名と出会いました。統合失調症は体のしんどさに加え、幻覚や幻聴のあるのが特徴ですが、一人の青年は自分に対する悪口が聞こえて苦しんでおられました(本当は誰も悪口は言っていないのです)。統合失調症は思春期に発症するのが多いとと聞いています。
  私は9歳の壁(あるいは10歳の壁)の後数年して思春期が来るという形で大学の時に学んできましたが、ここのところ思春期が早まっていることを知りました。思春期がどんどん9歳の壁に近づいているのです。9歳の壁の時期は抽象志向が発達する時期で、その脳が発達します。自分と他の人とは違うこと、考え方も人それぞれ、「友情」などの抽象的な言葉も理解し始めます。そして、思春期は思い悩む時期ですので、こういう脳の発達がまだ不十分なうちに思い悩む思春期を迎えるというのは気になっていました。が、現実9歳で思春期を迎える女児が増えてきています。男児は少し遅れて思春期を迎えるのが普通です。

  統合失調症には近年良い薬も出ているので、薬で一般的な生活ができる人も多いですが、投薬しても幻覚などが治まらない人もいます。本人は大変辛いですが、いまだそのメカニズムははっきりわかっていないらしいです。この精神的な病気が思春期と関係しているとすれば、統合失調症になる子どもも増えるかもしれないということです。統合失調症が発症しやすい年齢が思春期~30代で、全体の70~80%を占めるそうです。生涯で一度は統合失調症を発症する人の数は0.7%とも1%とも言われます。100人~120人に1人がかかっていることになるので、決して特殊な病気ではないのです。ただ、初期はうつと見間違われることも多いらしいのです。統合失調症は治療をしなければ発病してから最初の5年間で障害が急速に進むそうです。ですからできるだけ早く精神科医に相談することが望ましいです。

不器用になる時期

  また、発達障害などと違うのですが、思春期の頃、身体が急速に発達し、神経の伸びがついていかないために、例えばつまづきやすくなったり、うまく絵が描けなくなったり、彫刻刀、ノコギリなどが前よりうまく使えなくなってケガをしたりすることがあります。
  小学生の時には上手くできていたことができなくなって気持ちが落ち込むことがあります。これは「成長期不器用」とか「思春期不器用」と言われ、「動きのぎこちなさ」が現れる時期だからです。その頃に膝に「成長痛」がある子どもがいますが、この成長痛が4~8歳くらいの子どもにも10~20%現れるようです。
  要するに子どもはどんどん成長しているのですが、決してバランスよく成長しているわけではないのです。そこで、子どもたちは自分と他の子を見比べて気にしたり、あるいは大人の「こんな事もできないの!」「下手だねえ」などという心ない言葉で心くじけてしまうことがあるのです。

 言葉を選びたい

  子どものうちはどの時期でも結構心が揺れ動いています。大人にとっては別段どうってことの無い言葉にも子どもは反応して傷ついてしまうこともあります。特に先程書きました発達障害を抱えている子や中学生くらいの不器用になる時期には、親や先生方の言葉は重くのしかかってくることがあります。思春期の子どもたちは大人の言葉を勘違いして聞いてしまうこともあるのです。
  では、幼い子どもはどうかというともっと勘違いして聞いてしまうことがあります。多かれ少なかれ、保護者の方々も経験されていると思います。それは子どもの語彙数が少ないことと経験値も少ないということによるのです。親の言っている言葉がしっかり理解できていないにもかかわらず親はわかっているものと思って話し続けることで、子どもは落ち込んでしまうわけです。
  そこで、大人は子どもに伝わる言葉を語るべきなのです。そして、できるだけ良い言葉を使うべきなのです。どんどん言葉を覚えていく子どもたちですから、悪しき言葉を多く語られると悪い考えが浮かぶようになってしまうのです。

良い言葉を与える

  「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(p227西剛志 アスコム)に、脳にマイナスになる「使わないほうがいい言葉」が書かれていました。こんな言葉です。「疲れた」「嫌だ」「できない」「あの人のせいだ」「~しなければいけない」等々。これらの言葉を使った瞬間、脳は悪い影響を受けるのだそうです。若い人にこういう言葉を使ってもらう実験をしたところ、その人たちの歩くスピードさえも遅くなったそうです。
  「子どもにネガティブな言葉を語り続けるのは良くない」というのは聞かれたことがあると思います。ポジティブな言葉が子どもを生き生きさせるようです。「ダメ」「できないの?」「悪い子ね」などは子どもを卑屈にさせます。「できたね」「助かったわ」「ありがとうい」「大丈夫」などは子どもの心に良い影響を与えます。「ほめて育てる子育て」はそういうところから来たのでしょう。
  しかし、言葉は語る人の人格を表してもいます。表面上美しい言葉でも語る人の気持ちが美しくなければ言葉も美しく感じられなくなります。子どもはそういう気持ちを見抜くのが得意ですから、語る大人の側の気持ちはとても大事だということです。

  イエス・キリストは神ですが、ユダヤ人として生まれ、彼らに分かる言葉で語られました。しかも、その人の最も大事な点を突いて語られたので、痛い言葉もありますが、多くは励ましの言葉です。そして何と言っても愛に満ちた言葉です。そして、その言葉で人は癒されました。
   イエスは彼女にこう言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい。」(マルコ5:34)

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Posted by shinnakano