まさかの優勝
子育て通信

まさかの優勝

子育て通信

  (藤井敬朗の人生を神様に感謝しながら書いています)

神学生が来た

  教師時代、楽しいことがいっぱいありました(もちろん大変なことも、ものすごくたくさんありました)。
  陸上部の楽しい思い出はたくさんありますが、私が高槻キリスト教会に通い出して半年ほどしたときのことです。春休みになって教会に行きますと、私と同い年くらいの男性二人と、少し若い男性が一人、牧師先生と楽しそうに話をしておられました。彼らは「神学生」で、牧師になるために勉強をしておられた方々です。神学生は春休みは受業が休みですが、各地で実地研修が行われています。そこで、この3名はまだ開始したばかりの小さな借家の教会「高槻キリスト教会」に来ておられたのでした。

  彼らはとても楽しい方々で、私もその話の輪に入れていただき、私が陸上部の顧問をしていることなどを話していると大変興味深く聞いてくださいました。陸上部は春休みの練習にはサッカーなどもして生徒達を楽しませているということを話しますと、その神学生が「一緒にサッカーしたいなあ」と言われたのです。ならば「是非、時間があるなら来てください」と。申し出、牧師先生(私と同い年のM牧師)の許可をいただき、早速翌日来ていただきました。M牧師も来てくださり、生徒達も喜んでいました。神学生はとてもサッカーが上手で、本格的にプレーができたので、生徒達は大喜びでした。

畳の教会でコンサート

  この神学生が話し合って、生徒達のために教会でコンサートをしてくださることになり、生徒達30名くらいだったでしょうか、教会に集まりました。神学生は楽器も歌もとても上手な方々で、プロ級のコンサートに生徒達は大喜び、感動しました。会場の教会というのは小さな借家で、畳の部屋です。とてもコンサート会場なんて言う感じではありませんでしたが、この時ばかりは立派なコンサート会場と化していました。
  神学生はコンサート後に中学生にもわかるように聖書のお話をしてくださいましたが、生徒達はこちらもしっかり聴いてくれました。
  実地研修を終えられた神学生たちが帰られるとみんなちょっとさみしい気持ちになり、「また来て欲しいなあ」などと言っていました。

ギターの練習したい!

  でも、これがきっかけになって、教会に来てくれる生徒が増えました。また、生徒達もギターをやりたいと言い出しましたので、私のギターを貸し出して練習を開始しました。彼らは一気にギターの虜になり練習をしました。
  日曜日は教会に20-30人の生徒達が集まり、しっかり礼拝をしてくれました。礼拝の終わりが12時頃なので、みんなお腹が空いています。買い出し組が食パンと大根、人参、胡瓜などを買いに行きます。パンにものすごく薄--くマーガリンを塗り、大根などをスティックに切り、昼食タイムです。決してお腹がいっぱいになるわけでも無いし、いいランチでは無いのに、誰も文句を言わず、いやむしろ「美味しい!」を連発していました。みんなでワイワイ言いながら食べるだけで美味しいのだと思います。

フェスティバルに出るぞ

  昼食が終わるやいなや、ギターを取り出して練習しながら、ユース向けの賛美を歌います。ギターコードの簡単な曲ばかりを選んで、みんなで6畳+4畳半の部屋のふすまを外して畳の上に座り込んで歌います。よく近所から文句を言われなかったものだと思います。元気な歌声は学校の音楽の授業とはまた全然違う感じでした。なにしろ彼らみんなこの時間をとても楽しみにしているのですから。
  ギターと賛美の練習を始めて間もなく、M牧師が関西地区30数教会合同の「中高生フェスティバル」という集会にみんなで出場しないかと言われました。私もどんな集会かわからないまま「出よう!」と言い、みんなも陸上の試合に慣れていたせいか、出場することになりました。ギター5人、キーボード1人、タンバリン数人、鈴数人でみんなで歌うことにしました。20人くらいで参加したと思います。とは言ってもギターは始めたばかりの生徒なので、私はギターコードの簡単な曲を選び、さらにある生徒には「G」、ある生徒には「Em」と一つのコードだけを弾くように指示しました。そして自分のコードになると弾くというようにして、その他の時はひいている格好だけするという練習をしました。

緊張を越えて笑顔で

  さて「中高生フェスティバル」当日。行った先の教会は「大阪中央福音教会」という大きくて、立派な教会堂でしたので、生徒達はビックリでした。何しろ畳の小さな教会しか知らない生徒達ですから。
  その会堂にたくさんの中高生とスタッフ、牧師先生方がおられるので、生徒達は一気に緊張してしまいました。私も彼ら以上に緊張しました。
  次々ステージに立って演奏・賛美する各教会のグループはとても上手で、私たちには勝ち目はありませんでした(この集会では順位がつけられ表彰されていました)。
  ついに高槻キリスト教会の番です。練習通りにギターを最前列にイスに座って並ばせ、キーボードをその横に、後ろにタンバリンや鈴をもった生徒・歌うだけの生徒とぎっしり詰めて並びました。なにしろ他の教会よりもステージに上がった生徒は多かったのです。
  さあ始まるというとき、彼らの緊張が目に見えました。顔もこわばっています。「これはまずい!」と、思った私は会場側から叫びました。「頑張れー!」と。そして、立ち上がってさらに叫びました。その私を見てくれて、生徒達は何かしら緊張感よりも恥ずかしさの顔つきになりました。私も恥ずかしさを押し殺して、思いきり笑顔でガッツポーズもとりました。すると一気に彼らの顔にも笑みが出ました。
  スタート!私も座らず、立ち上がったまま、手を振り、賛美を歌い、体を揺すっていました。その様子を見て、会場は大笑いになっていました。でも今さら座るわけにもいかず、そのままやり続けました。うちの生徒達は実に明るく元気に笑顔で賛美してくれました。終わると今までに無かったような拍手が会堂いっぱいに湧き起こりました(あー、恥ずかしかった)。

まさかの優勝

  全ての教会の発表が終わって、最後の表彰式の時間となりました。勝てるわけが無いとは思っていましたが、「努力賞」とか、せめて「笑ったで賞」とかもらえたら嬉しいなあと思ってソワソワしていました。
ところが、何と「優勝」したのです。ビックリです。生徒達も陸上大会で賞状をもらったとき以上の喜びで、跳び上がっていました。

さらに成長!

  こういうことがあると中学生というのはますます成長しますね。また、燃えます。この後学校では、陸上部の生徒達が生徒会長などに立候補し、執行部役員11名中8名を陸上部員が占めました。それは何となく重苦しさのある学校を良くしようという意気込みからでした。最初はその陸上部の生徒達の思いがいまいち伝わりませんでしたが、友達である他のクラブの部長達と話をしてくれて、だんだん意識が伝わり始めたのです。すると他のクラブも協力してくれるようになり、校則を見直しての学校改革を行っていくことになったのです。これはなかなかすごいことでした。

  さらに陸上部は高槻市の中体連18中学校参加の陸上競技大会で、男子優勝、女子優勝、総合優勝を果たしカップ三つを持って帰りました。

  楽しいことをしていただけなのに、こういうことが起こるとは嬉しいです。何度も書いているかも知れませんが、楽しいことだけでは無く大変なこともいっぱいありました。それでも楽しいことが多いせいでしょうか、大変だったことを忘れてしまいそうです。大変だったことを書き始めればそれはそれで書けると思います。でも、やはり楽しかったことを思い出す方がいいですね。
  子育てもそのときは大変と思うことが多いかも知れませんが、振り返るようになると「あー、楽しかったなあ」と思われるのではないでしょうか。

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Posted by shinnakano