母の祈り、祈の母
苦しみと希望の祈り Ⅰサムエル 1:10--20

母の祈り、祈りの母

礼拝メッセージ

説教者:藤井敬朗牧師
2023/8/13 礼拝説教
【テーマ】  苦しみと希望の祈り
【説教題】 「母の祈り、祈りの母」
【聖書箇所】 Ⅰサムエル1:10-20

1:10 ハンナの心は痛んでいた。彼女は激しく泣いて、【主】に祈った。
1:11 そして誓願を立てて言った。「万軍の【主】よ。もし、あなたがはしための苦しみをご覧になり、私を心に留め、このはしためを忘れず、男の子を下さるなら、私はその子を一生の間、【主】にお渡しします。そしてその子の頭にかみそりを当てません。」
1:12 ハンナが【主】の前で長く祈っている間、エリは彼女の口もとをじっと見ていた。
1:13 ハンナは心で祈っていたので、唇だけが動いて、声は聞こえなかった。それでエリは彼女が酔っているのだと思った。
1:14 エリは彼女に言った。「いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい。」
1:15 ハンナは答えた。「いいえ、祭司様。私は心に悩みのある女です。ぶどう酒も、お酒も飲んではおりません。私は【主】の前に心を注ぎ出していたのです。
1:16 このはしためを、よこしまな女と思わないでください。私は募る憂いと苛立ちのために、今まで祈っていたのです。」
1:17 エリは答えた。「安心して行きなさい。イスラエルの神が、あなたの願ったその願いをかなえてくださるように。」
1:18 彼女は、「はしためが、あなたのご好意を受けられますように」と言った。それから彼女は帰って食事をした。その顔は、もはや以前のようではなかった。
1:19 彼らは翌朝早く起きて、【主】の前で礼拝をし、ラマにある自分たちの家に帰って来た。エルカナは妻ハンナを知った。【主】は彼女を心に留められた。
1:20 年が改まって、ハンナは身ごもって男の子を産んだ。そして「私がこの子を【主】にお願いしたのだから」と言って、その名をサムエルと呼んだ。

Ⅰサムエル1:10-20

○ 辛いこと、あるいは問題が起こって祈ることは多々あるかと思います。祈ったことが実現したらどんなに嬉しいことでしょう。私は教師の採用試験に落ちて、教師になることを簡単に諦めかけました。しかし、祈ってもいないのに、産休講師の道が開け、その1年間に3人の先生・事務員の方の産休講師として働けました。次の採用試験こそは受かりたいと思ったのですが、仕事が忙しくて勉強できませんでした。祈っておりましたら、不思議に一般教養の1次試験突破。2次試験は専門ですので、美術の筆記テストです。試験会場に入るとみんな美術史の本を開いて勉強しています。「しまった!美術史があったのか!」障害児教育の勉強ばかりしていた私は美術史があることなどすっかり忘れていました。もう諦めて聖書を読んでいました。試験には何とその年は出題傾向が全く変わって、美術史は一問も出ませんでした。それで筆記テストを通過してしまいました。しかし、次は実技です。美大卒の人がたくさんいる中、下手な絵を描きましたが、これも通過。健康診断。ここでひっかかると思ったのですが、これも通過。大阪府の面接。言いたいことを言っただけなのに通過。そして、産休講師をした高槻市に採用されました。祈りってすごいですね。(笑)

母の祈り、祈りの母

ハンナは苦しんで祈った

心に痛みを抱えて祈る

    1.ハンナには子どもが無く、もう一人の奥さんにいじめられ、とても辛い思いをしていました(もう一人奥さんがいること自体問題ですが)。 1:10 ハンナの心は痛んでいた。彼女は激しく泣いて、【主】に祈った。 とあるように、彼女は心に痛みを覚えながら祈りました。

    2.私達も心に痛みを覚えながら祈ることがあるのではないでしょうか。自分のことや家族のこと、友人のこと、兄弟姉妹のこと。「苦しいときの神頼み」とは言いますが、決してそれが悪いわけでは無いと思います。苦しいときに祈らないでどうするのでしょう。

誓願を立てて祈る

    1.最初、彼女は「子どもをください」とだけ祈ったかも知れません。しかし、この時は祈る内に彼女の祈りは誓願を立てて祈るようになりました。 

そして誓願を立てて言った。「万軍の【主】よ。もし、あなたがはしための苦しみをご覧になり、私を心に留め、このはしためを忘れず、男の子を下さるなら、私はその子を一生の間、【主】にお渡しします。そしてその子の頭にかみそりを当てません。」

1:11

 何も私達もこのように祈るべきだと言うわけではありません。

    2.神はハンナが長く祈っているのをもちろんご存知でした。辛い立場にあることもご存知でした。しかし、なかなかハンナの祈りをきいてくださらないで、年月ばかりが過ぎていったのです。そして、彼女が誓願を立てて祈った時、神は遂に祈りを聴かれました。つまり生まれてくる子は神に献げられるのです。

ハンナの祈りは願いを超えた

神の不思議な選び

    1.ハンナは祈る内に神の導きでこのように誓願を立てたのです。つまり、当時、イスラエルに必要なリーダーが無かったのです。士師記に出てきた士師のようにイスラエルを守れるリーダーが必要になってきたのです。

    2.そこで神はこのハンナからリーダーになる子を与えようとされました。なぜ、ハンナなのか?そういうことはわからないものなのですが、イエスの母としてなぜマリアが選ばれたのか?わからないです。

みこころを祈るようになる

    1.ハンナは辛くて自分のために祈っていましたが、祈りは祈り込む内に神のみこころを祈り出すものなのです。だから常に祈る必要があるのです。

    2. 

ハンナは心で祈っていたので、唇だけが動いて、声は聞こえなかった。それでエリは彼女が酔っているのだと思った。

1:13

ハンナの祈りは当時にしては珍しい声を出していない祈りでした。 それでエリは彼女が酔っているのだと思った。 この言葉はどこかの聖書箇所を思い出しませんか? そう、使徒の働きです。聖霊のバプテスマを受けた弟子達が異言を語ったとき、人々は「酒によっている」と思ったのです。祈りに集中している姿は時にそんなに麗しく見えないかも知れません。

ハンナの祈りは答えられた

祈りを用いられる神

    1.マリアが天使から聞いた言葉に対して、「どうぞ、あなたのおことばどおり、この身になりますように」と言いました。これは祈りです。マリアは子どもが欲しいと祈ったわけではありません。しかし、神から与えられてしまったのです。神のなさることを受け入れる事を決めたのです。

    2.ハンナの方は強く求めました。そして、神はその祈りを聴いてくださいました。神の計画の実行のためにハンナの祈りが用いられました。 

年が改まって、ハンナは身ごもって男の子を産んだ。そして「私がこの子を【主】にお願いしたのだから」と言って、その名をサムエルと呼んだ。 

1:20

神のみこころを行う祈り

    1.祈ることは神のご計画を知ることでもあるのです。みこころを知るとは、みこころを行う事でもあるのです。 

そして誓願を立てて言った。「万軍の【主】よ。もし、あなたがはしための苦しみをご覧になり、私を心に留め、このはしためを忘れず、男の子を下さるなら、私はその子を一生の間、【主】にお渡しします。そしてその子の頭にかみそりを当てません。」 

1:11

とサムソンと同じように献げられた人となるのです。

    2.祈ったハンナ自身はリーダーになったわけではありません。しかし、その祈りで生まれ育てられたサムエルがリーダーになります。ハンナはリーダーを生み出すための祈り手として用いられたのです。私達のなかにもそういう人がいるのではないでしょうか?

● 幼子アウグスチヌスは母モニカからキリスト教を学んだのですが、青年になったアウグスチヌスは異教にのめり込み、さらに女性問題も引き起こし、どんどん堕落していきました。母モニカの祈りは彼を救ってくださることでした。堕落していくアウグスティヌスに対してモニカは希望を捨てず、祈り続けました。ある日アウグスティヌスは讃美歌を聴き、自分の生き方に泣き、悔い改めて教会に戻りました。そこから彼は真の信仰を調べ神学者となるのです。母の涙の祈りは長きを経て実を結ぶのです。

★ 祈り始めたときは辛くてそこからの解放を求めたのに、祈り込む内に自己中心の祈りから神のみこころを祈るようになることがあるのです。苦しみの祈りが喜びや希望の祈りへと成長するのです。進化論があるとすれば、祈りの進化論も考えたいですね。